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 あなたの組織で「新しい職員が入っても定着しない」ことはありませんか?私も、訪問看護師が退職するという話をよく聞きます。なぜなら、筆者は「訪問看護しゃべろう会」等の訪問看護サロンを運営しています。そこで看護師の退職理由として聞かれるのは「孤独とプレッシャーに潰されそう」「訪問看護はこれで良いのか?」「管理者は孤独・・スタッフを大切にしたい」「もう明日にでも辞めたい」と・・訪問看護師から胸が苦しくなる程の言葉が次々と聞かれます。実は、上記の理由は、よく退職する看護師本人が語ることですが、本当の退職理由ではないのです。

 退職者の本音は、本人の語る言葉の裏を読まなければわかりません。そうなる理由として、そこには訪問看護という通常の病院勤務とは違う職場の仕組みが、退職の連鎖を生んでいるのです。そこに対策を取るだけで、離職率が大幅に改善できるのです。

 訪問看護の仕事は、一般的な病院勤務の看護師の仕事とは全く違うという所が背景にあります。これまでの自分のキャリアを生かして転職したものの、全く違う仕事だったために、自分の能力不足ではないかなどと不安に感じる看護師も多くいると、数々の相談を受けた結果実感しています。私の経験から、これから紹介するような対策を取ることで、ナースの離職を減らすことが可能であるということがわかりました。要するに、病院勤務のナースの気持ちや能力から、訪問看護師という違う職業への転職のサポートのような支援体制を築くことが必要なのです。現場で働く訪問看護師は「満足してもらえる看護サービスを提供したい。」「失敗するかもしれないけど、フォローをしてもらいながらチャレンジし成長したい。」と思っています。しかし、自分の能力と現実のギャップがあると感じているので、そこを埋めるという作業、つまり、『本当の退職理由』を探ることが重要なのです。

【退職理由になる主な誤解】

1.ひとりで責任を負わなければと感じている

 病院で勤務していた看護師にとって、環境のギャップはとても大きく感じます。一人で訪問に行くことで、自分の観察や判断・ケアが「これで大丈夫なのか」「誤っていないのか?」と不安を抱いているのです。また、他のスタッフも訪問に出ているため、「すぐには相談できない」「現場を共有できない」と相談ができない・頼れないと思い、一人で大きな責任を負っていると感じているのです。更には、病状が刻々と変化するターミナル期や急性憎悪など状況変化が大きい場合、単独訪問による負担は大きくなり疲弊感に繋がりやすいのです。現場に出るのは1人ですが、チームで仕事をしているというイメージをもたせることが重要なのです。

2.看護提供する対象者の幅が広すぎる

 「どこまでを対象とすればよいのですか?」と入職した看護師から質問を受けます。答えは、利用者本人や家族のみならず、遠方に住む家族や、近隣住民や地域までもが対象です。よって1件の訪問で関わる人数がとても多いことがわかります。ところが目の前の仕事に忙殺されて、対象者が幅広いということに気づいていない看護師もいます。訪問看護においては、対象者が近隣住民まで含まれるというような、幅の広い人々の対応をしなければならないことを、きちんと伝えるだけでも離職率の改善につながるのです。

3.病院勤務とは全く違う時間管理スキルが必要

 訪問の際には移動が必ず加わります。車・電車・自転車・徒歩など、移動する時間も加味してのスケジュール管理をしなくてはなりません。また訪問時間も決められていることで「遅れてはいけない」というプレッシャーや、ケアの時間で料金が設定されていることから「短くてはいけない、オーバーしてはいけない」と常に時間管理が要求されているのです。更には、受持ち制で訪問のスケジュールを組んでいることが多く、急な休みや長期休暇を取得しづらく、ワークラフバランスの均衡を保つことが困難な環境にもあるのです。又、病院の夜勤は交代制ですが訪問看護はオンコール体制で、日勤のあといつ呼ばれるのかわからない緊張感があり、深夜出動では睡眠を中断しての勤務と身体的影響も大きく、休息との時間管理が重要なのです。ここは看護師に対する何らかの知識の周知というよりは、経営者がITなどを駆使するなどして、時間効率や休息とのバランスがとれた働き方の仕組みを構築することが重要です。

4.説明は医師の仕事だと思っている

 筆者が訪問看護で最初に感じたのは説明の多さです。病院では説明=医師がその多くを担っていますが、訪問看護においては看護師が医療的知識や治療過程を利用者に噛み砕いて説明します。看護師という専門職がアセスメントする頭の中の過程を、毎回の訪問看護で説明するのです。時には初回訪問で命が途絶える可能性があることも医師の診断を待たずに話す必要もあります。医療者としての役割と認識を訪問看護師に理解してもらってから、実際の仕事に出てもらうことが鍵となってきます。

5.知らないことを教えてもらえない

 看護師経験を持って入職している看護師が9割を占める職場が故、経験者への教育は不要と捉えている職場があります。しかし、ここまで述べてきたように新たな分野で習得することは確実にあるのです。また管理者においても、看護師経験があるだけでは出来ないのです。看護師以外のしごとを経験された方でマネジメントをやったことがある人は別ですが、急に管理業務をこなせる人はまれです。マネジメント業務に関しては研修など、しっかりと教育プログラムを作成して対応すべきです。実際に教育にリソースを割いていない訪問看護ステーション経営者が多いので、看護師側に寄り添った教育システムを構築することが解決につながります。

筆者からのメッセージ

 以上5項目にわたり退職を考えている訪問看護師の仕事に対する誤解と、その対策を書いてきました。病院ではなかったこと、訪問看護だからあることを理解することが退職を防ぐ大きな一歩となるのです。筆者も病院勤務を経て、訪問看護の仕事へ就き管理者時代に離職率をなかなか下げられずに苦戦した時期がありました。この経験から生まれれた、ご紹介した5つの看護師の離職率を下げる方法が、皆様のお役に立てれば幸いです。 

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