お電話はこちらまで

045-507-5559

Eメール

nurse-ie@personal-nurse.biz

営業時間

月~土・祝日営業:8:30am-5:30pm

 ハラスメントを受けていても、それを声に出して良いのか悩んでいるスタッフがいることに気付いてますか?在宅は密室の看護。そこから目を背けているとスタッフは退職、それどころか会社が訴えられる時代です。

 厚生労働省の看護職の方々への暴力・ハラスメントに関する調査によって、意外な事実が明らかになりました。実は、85%もの看護施設でハラスメントが行われているのです。私も多いとは思っていましたが、ここまでの結果が出てくるとは思わず、衝撃を受けました。みなさんの想像よりも、暴力、セクハラ、精神的な暴力などが職場で起きていると思いませんか?

 こういった問題は放置できません。職員が辞めてしまうどころか、悲惨な事件に発展した例もあります。2019年には訪問看護師に睡眠薬のようなものを飲ませわいせつな行為をしたという卑劣な事件が起き、2022年2月に往診医が銃殺されるというショッキングな事件が起きました。あなたの職場ではスタッフが相談できていますか?相談できていると思っている運営者も多いかも知れませんが、職員として相談がしっかりできると感じられる職場は少ないようです。ポイントなるのは、ハラスメントを知ること・マニュアル策定と周知・対策のシュミレーションになるのです。

 まずは、ハラスメントの定義を理解しましょう。ここの共通認識がズレていると、職員全体が連携してハラスメント対策をすることはできません。

 ハラスメントは1980年後半頃から「セクシャルハラスメント」の言葉が良く聞かれるようになり、そこから様々な「ハラスメント」が登場し、今や30以上のハラスメントが言われるようになりました。ハラスメントとは「相手の意に沿わない言葉や行動によって不快な思いをさせてしまうこと」を言います。たとえ本人にそのつもりがない場合でも、相手が傷ついたりすればハラスメントと認定されるのです。やはり、世代が違う職員同士は、ハラスメントの定義の認識がズレていることが多いです。ベテランの人に、時代が変わったことを認識してもらうことが特に重要です。

 筆者の若い頃はハラスメントが起きても泣き寝入りするのが当たり前だったのですが、現在ではスタッフは辞めてしまうことなのです。だから、管理者は軽いこととか、最近の若者の忍耐がないと思ってはダメなんです。しかし、管理の仕事などはせず、現場のしごとだけをしてきた職員などは、『最近の若者は・・・』とか、ゆとり世代がとか、そういったことを原因だと決めつけてしまいがちです。それでは、解決できる問題も、永遠に解決できなくなってしまいます。

 ハラスメントの定義が一致しておらず、マニュアル策定、周知、対策がとれない現場では、こんな会話がきかれてきます。「利用者さんが何かをする度に触ってくるんです・・」と新人看護師。すると先輩看護師が「○○さんは好かれたのね、利用者さんも寂しいんじゃないの?」と返します。新人看護師は「利用者が何故触るのかではなく、どのように対応したら良いのか」を知りたいのです。この返答のままでは、新人NSは「我慢するしかない。」と思うでしょう。一方で先輩看護師の発言は個人の問題ではなく職場全体でハラスメントの対応を知らないことが原因だったのです。

 これを予防するには、「ハラスメント」を理解し、次の3つのポイントを抑えた対策をおこなうことが重要です。

①事業所の安全管理体制整備

 強制的なすりあわせができることが重要です。具体的には、まず雇用契約を結んだ時点で、「雇用契約書」「訪問看護契約書」「ハラスメント対策マニュアル」にハラスメント防止・対策に努める宣言をしてもらいます。この1度の宣言だけでは忘れてしまうので、ハラスメント対策委員会や、報告・相談窓口を設置し、常に最初にしてもらった宣言を忘れないような環境を作っておきます。また、対応対策の見直しも随時行います。こういった対策を自社で導入したい場合、予算があれば、研修を外注することが可能です。小規模事業者であっても、対策マニュアルは訪問看護事業協会のHPから無料でダウンロードできます。それをベースに自社の働き方に応じて、カスタマイズして使用するようにすれば対策は十分です。

②職員の意識改革

 職員一人一人がハラスメントに関する知識を深め、予防法と対応策を学べる環境を整備することが重要です。具体的には、ポイント1で行った宣言を職場で活かすような入職時オリエンテーション、職場内の研修などを行います。これにより宣言で行われた抽象的な概念を、具体的なマニュアルとして頭に入れてもらいます。特にオススメしたいのが、事業所内研修をスタッフが持ち回りで講義することです。これはラーニングピラミッドの考え(図3)からも効果的ですし、筆者の経験からも効果を実感しています。

③利用者の意識改革

 当事業所は「暴言暴力は絶対に許さない」方針を契約時に伝えることが重要です。多くの事務所は、利用者を施設が信用していないように思われるからと、契約書には書いてあっても、それを強調していません。しかし、これを最初にしておけば、後に、トラブルがあった場合に、『最初に説明した・・・』とお伝えするだけで問題が解決することも多いので、絶対にこれを行っていただきたいです。

 契約時にお伝えする時のポイントとして、ポスターやパンフレット等を作成して、ハラスメントを具体的にわかりやすく説明することが効果的というのがあります。しっかりと説明し文書に残すことは、実際に起きた時の対策として有効です。しかし、そういったことに賛同しないどころか、今後、ハラスメントを行うのではないかと感じさせられる訪問先もあります。これを放置してしまうと、ハラスメント対策の根幹が崩れてしまいます。ですから、訪問先ハラスメントの予兆がある人は、複数での訪問、もしくはオンラインで管理者が現場を把握するなど、事前に対策を打つための話し合いをしておくことが必要です。

 ハラスメントは問題が起きてから対策をするという意識では、問題の根本解決にはなりません。”予防”をすることが、一番大切なことなのです。上の3つのポイントは、ハラスメントが起きてからの対策ではあるものの、それを徹底的に周知することで、協力な予防措置となるのです。大きな問題が起こってから対策を取るのに比べれば準備は100倍簡単です。私は問題が起こって大変な思いをしてきた施設を見てきましたので、この記事を読んだ方で思い当たる節があるかたには、小さい芽のうちに問題を解決しておいていただければと思います。

この記事への質問や感想、研修依頼等は
https://nurse-noie.com/contact/  nurse-ie@personal-nurse.biz迄ご連絡ください。また訪問看護運営にこの記事を利用していただくのは大歓迎です。その際にはご連絡や一言ご紹介を頂けましたら幸いです。横山

Recommended Articles